帰国するとき、年金が一部戻る!外国人のための「脱退一時金(だったいいちじきん)」をやさしく解説
帰国する外国人のための脱退一時金。もらえる条件・手続き・期限をやさしく解説します。
日本で働いている間、毎月の給料から年金保険料(ねんきんほけんりょう)が引かれていますね。帰国する人の中には、「払った年金はどうなるの?全部なくなってしまうの?」と心配する人も多いはず。実は、条件を満たす外国人は、帰国後に年金の一部を「脱退一時金(だったいいちじきん)」として受け取ることができます。この記事では、もらえる条件・手続き・大切な期限をやさしく解説します。
1.脱退一時金(だったいいちじきん)とは?
脱退一時金とは、日本を離れる外国人のためにある制度です。日本に短い期間だけいた外国人は、払った保険料が将来の老齢年金(ろうれいねんきん=老後の年金)に結びつきにくいことがあります。そこで、年金を受け取らないまま出国した人に、払った保険料の一部を一時金として返す仕組みです。
大切なポイント:これは「年金が全部戻る」制度ではありません。払った金額の一部が戻るもので、金額は加入期間や給料によって決まります。また、請求しないともらえません。自動では振り込まれません。
2.もらえる条件は?5つすべて満たすこと
次の条件をすべて満たす人が、脱退一時金を請求できます。
1. 日本国籍(にほんこくせき)を持っていないこと
2. 国民年金(こくみんねんきん)または厚生年金(こうせいねんきん)の保険料を6か月以上納めたこと
会社員として働く人の多くは厚生年金に入っています。
3. 日本に住所がないこと
出国して、日本の住所をなくした状態であることが必要です。市役所での転出届(てんしゅつとどけ)も忘れずにしましょう。
4. 老齢年金などを受け取る権利がないこと
すでに年金を受け取る資格がある人は、脱退一時金はもらえません。
5. これまでに脱退一時金を受け取ったことがないこと
そして、もう一つ、絶対に守らなければいけない期限があります。それは次のセクションで説明します。
3.期限は「2年以内」!これだけは忘れないで
脱退一時金は、資格を失った日(出国などで年金の資格がなくなった日)から2年以内に請求しなければなりません。2年を過ぎると、もう請求できません。延長もできません。
帰国した直後は、新しい生活で忙しく、つい後回しにしてしまう人も多いです。でも、2年は意外と早く過ぎます。帰国する前に「帰国後に請求する」と計画しておくことが大切です。家族や友人に「2年以内に請求すること」を伝えておくのもよいでしょう。
4.いくら戻ってくるの?
金額は、年金制度の種類・加入期間・給料(標準報酬額・ひょうじゅんほうしゅうがく)などによって決まります。金額の表は年度によって変わるので、請求する前に日本年金機構(にほんねんきんきこう)の最新の表で確認しましょう。
(1)国民年金の場合
保険料を納めた月数によって金額が決まります。計算の対象になるのは、最長で60か月(5年)分です。つまり、5年以上納めていても、国民年金の脱退一時金は60か月分が上限になります。
(2)厚生年金の場合
加入していた期間の平均の給料と、加入月数をもとに計算されます。給料が高い人や、長く加入していた人ほど、金額は大きくなる傾向があります。ただし、厚生年金の脱退一時金からは、20.42%の税金が源泉徴収(げんせんちょうしゅう=先に引かれること)されます。
引かれた税金は、取り戻せる場合があります。日本に「納税管理人(のうぜいかんりにん)」を立てて、確定申告(かくていしんこく)をすることで、源泉徴収された税金の一部または全部が返ってくることがあります。手続きがむずかしい場合は、税理士(ぜいりし)に相談するのも一つの方法です。
5.請求の流れ
1. 帰国前に準備する
基礎年金番号(きそねんきんばんごう)が分かる書類(年金手帳や基礎年金番号通知書など)を保管しましょう。銀行口座の情報も確認しておきましょう。海外の銀行口座への送金もできますが、手数料や手続きに注意が必要です。
2. 出国する
市役所で転出届を出し、日本の住所をなくします。パスポートに出国の記録が残ることも、請求のときの証明になります。
3. 帰国後に請求書を送る
「脱退一時金請求書」に記入し、パスポートの写しや銀行口座の情報などの必要書類と一緒に、日本年金機構へ郵送で請求します。請求書は日本年金機構のホームページから入手できます。書類に不備があると、時間がかかるので、コピーを取って保管しておきましょう。
4. 審査のあと、振り込まれる
審査には数か月かかることがあります。振込先や住所が変わった場合は、早めに連絡しましょう。
6.請求する前に、よく考えたいこと
脱退一時金を請求すると、その期間の年金記録はなくなります。つまり、将来その期間が老齢年金の計算に入らなくなります。次のような人は、請求する前に慎重に考えましょう。
・将来また日本で働く予定がある人
再び日本で年金に加入しても、脱退一時金をもらった期間は復活しません。
・一時帰国(みなし再入国許可)で出国する人
2026年4月以降、再入国許可(みなし再入国許可を含む)の有効期間内は、脱退一時金を請求できません。請求するには、許可を放棄するか、有効期間の満了を待つ必要があります。年末年始の一時帰国とは別の手続きになるので、注意しましょう。
・母国と日本の社会保障協定(しゃかいほしょうきょうてい)がある人
協定によっては、日本での加入期間を母国の年金と合算できる場合があります。脱退一時金を請求すると、その合算ができなくなることがあります。母国の年金制度も含めて、よく確認しましょう。
・老齢年金が近い人
加入期間が長く、将来年金を受け取れる見込みがある人は、脱退一時金より年金を受け取るほうが有利なこともあります。
迷う場合は、請求する前に日本年金機構や、登録支援機関(とうろくしえんきかん)、行政書士(ぎょうせいしょし)に相談しましょう。
7.まとめ
・脱退一時金は、日本を離れる外国人が、払った年金保険料の一部を受け取れる制度です。
・条件は、日本国籍でないこと・6か月以上の納付・日本に住所がないこと・年金受給権がないこと・過去に受け取っていないことです。
・期限は、資格を失った日から2年以内です。過ぎると請求できません。
・国民年金は最長60か月分が対象です。厚生年金は給料と加入月数で決まり、20.42%の税金が先に引かれます(納税管理人と確定申告で取り戻せる場合があります)。
・請求すると、その期間の年金記録はなくなります。将来また日本で働く人や、社会保障協定がある国の人は、請求前に相談しましょう。
参考:厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」、日本年金機構「脱退一時金」
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